–材料採取– 岩手県のさわぐるみ樹皮 1

東京では新緑の香りから初夏に移っていく季節。
岩手のさわぐるみ樹皮を使ってかごを製作されている方にお願いをして、
材料採取に同行させていただくこととなりました。

竹や笹などを細工される方の材料採取は、水揚げが終わって、
材が締まってくる秋から雪が降るまでの季節が一般的です。

それに対して、くるみ樹皮や山ぶどうの蔓の材料採取は、
水分をたっぷりと含んだ春から梅雨時期が最盛期となります。

真夏でも剥ぐことはできるそうですが、
とにかく暑く、周りの草の繁茂を目の当たりにすると、まずやる気がそがれること、
実際に草をかき分けながらの作業となるため、かなり効率が悪く、体力を消耗するとのこと。

岩手県山沿いの初夏は、車で窓を開けながら走っていると、
長袖のパーカーを来ていても、当たる風が肌寒かったです。
これから、材料採取という野外活動をするにはちょうどよい季節なのかもしれないと感じました。

朝9時過ぎに待ち合わせの駅で合流し、
車に乗せていただき、1時間ほど走りました。

事前に調べてくださっていた材料採取ポイントへ向かいました。

雲がかかった岩手山。盛岡からポイントへ向かう途中の車窓から。


40分ほど過ぎたときには林が左右にある中を走っていて、
人が住む家はほとんどなくなり、みるみる道は細くなっていきました。

さらに道の横を走る小川は右に左に向きを変えて、道の下を何度も横断していました。
人が作ったものではない、自然の成り行きでできた川の道でした。





「あー、これもさわぐるみですよ」

と都度、運転席から教えていただくのですが、
最初はどの木がそれなのか全く判別がつきませんでした。

岩手県の大きな大きな自然

しかし、何度か教えていただいているうちにふと、あることに気がつきました。


「距離が近い。」


自分たちが走っている川沿いの道とさわぐるみの木が生えている場所の距離が近いんです。

「さわぐるみ」という言葉。
さわぐるみは「沢胡桃」と漢字で書きます。山ぐるみもありますが、こちらは沢の方。

なるほど、とにかくさわぐるみの実は、
車道の下を右に左に横断しているこの小川(=沢)の流れを利用して、
種を新しい場所へ運んでいるのだ。
景色に目を戻しながら、川のすぐそばにさわぐるみの木が立っているということに、
「そうかー、そういうことなのか。」と、声を出して感心してしまいました。

山ぐるみの実と違い、さわぐるみの実は普通、食べないといいますから、
この沢の流れが大変重要なことがわかります。
さわぐるみという言葉は日々お客様にご説明するときにも使っていましたが、
その本当の意味がバチーンと一致した瞬間でした。

このようなことは現地に来て、目の前でその状況を見ることで、
一瞬のうちにクリアに理解できるのですね。実に勉強になります。

そんなことを一人で考えているうちに、車のスピードが急に緩やかになりました。







「ここが楽園なんです。」

さわぐるみの若木が林立している「楽園」

ほんとうに嬉しそうに、そして、少し興奮した声でその言葉を発し、
車を邪魔にならない場所に停めました。
そこから見える範囲にはさわぐるみの若木がまさに林立していました。

さわぐるみの若木

さわぐるみ細工に使うのは、2〜3年ものが多いとのこと。
先端に淡い緑の葉が出てきたら、樹皮を剥ぐことができるサイン。

正直なところ、私はさわぐるみの樹皮と聞いて、
立派な太い木の樹皮の一部を剥ぐものだと思っていました。
しかし、実際は比較的若くて、細めの枝を切るということです。

それでは、はりきってさわぐるみの材料採取、いってみましょう。

このように、ひたすら「楽園」で材料採取に勤しみ、
私も撮影しながら、少しお手伝いをさせていただきました。

ノコギリで切る若木の感覚、手応えはこの手に今でも残っています。
ときに刃を挟んで離さないほど、十分に水分を含んだ木そのものの感覚。


目標量を採取できた若木を見ながら、満足そうに一服するその後ろ姿に、
私も一緒にホッとしたのでした。


イチカワトモタケ
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このコラムでご紹介したさわぐるみを使って作られた作品をオンラインショップでご紹介しています。
こちらからご覧いただけます。



(材料採取)岩手県のさわぐるみ樹皮2に続きます