–しめかざり– 数を作る、おなじに作る
例年にくらべると暖かいと感じる12月ですが、今朝は薄手のジャケットから冬物のコートへと衣替えし、ようやく冬本番という気がしています。
今年もあともう少し。年末から年始にかけての準備を始める方もいらっしゃることと思います。
ただいま、弊店ではオンラインショップと店頭にて、しめかざりを販売しております。
オンラインショップ、実店舗とも、販売は2023年12月28日(木)まで。ぜひご利用くださいませ。
ラインナップの中には、10月のご予約分ですでに販売終了したもの、
また現在(2023年12月15日)は在庫がなく、後日入荷予定のものもありますが、
まずこちらのコラムでは、現時点で購入可能なものについてご案内します。
*それぞれの商品名をクリックすると、各商品ページへ移行することができます。
こちらは3つの輪と、わら束、そして稲穂が付いた掛けかざりです。
三拍子とは、能楽の囃子において、大鼓・小鼓・笛の3つの楽器でとる拍子のことですが、その3つの拍子が揃う(三拍子揃う)と音楽の調和がとれることから、3つの大切な要素が揃う、また、(転じて)すべての条件が整うという意味もあります。
こちらは円満の「姫サイズ」。
かわいらしい小さな飾りですが、作りは大きいものと変わらず、その姿からは凛とした印象を受けます。
活きのいい鯛に見立てられた、縁起の良いお飾りです。
薄紅のきれいな色やその味のよさから、縁起のいい魚として冠婚葬祭でも重宝されている鯛。
こちらもがっしりとして、エネルギーに溢れています。
4. 南山寿-なんざんじゅ-
海老のかたちに見立てられたしめかざり。
ひげが長く、腰の曲がった姿は長寿の象徴ともされています。
「南山之寿(なんざんのじゅ)」というのは、長寿を祝うことば。中国の『詩経』の一説に由来し、
「南山」とは中国・長安(現:西安)の南方に位置する山のことで、その悠久な姿から、当地では古来から堅固でこわれないもののたとえとされてきました。
「南山が欠けたり崩れたりしないように、いつまでも変わらず健やかでいる」という意があります。
5. 百福 -ひゃくふく-
多くの幸福、という意味のあることば。
こちらは自然災害のない穏やかな日々、平和を願う掛けかざりです。
桟俵(さんだわら/米俵の蓋の形をしたもの)の部分に、南天の実や葉を挿して装飾するのもすてきです。
7. 瑞-ずい- 大サイズ
飾り結びの代表格ともいえる、「総角(あげまき)結び」が施されています。
神様の加護や除災を願う”護符”や”魔除け”などの意味を持つ装飾結びです。
写真のように立てて飾ることもできますし、後ろに綿紐が付けられているため、掛けて飾ることもできます。
9. 小さな輪じめ
こちらは輪かざりと呼ばれるしめかざりです。
輪かざりは各地に見られる、しめかざりの一つです。
手に載るほどのちいさなかわいらしいサイズですが、丁寧にしっかりと編まれた質のよい輪かざり。
台所やお風呂、トイレなどの水回りに。または、1年をともにしてきた大切な道具に飾るのも。
ほかにも、商品タイトルに【販売中】とあり、在庫があるものはご購入いただけます。
東京のしめかざりもまだまだご紹介しておりますので、あわせてご覧ください。
なお、「巡り廻る-めぐりめぐる-」につきましては
12/18頃に入荷する予定となっております。
入荷のお知らせをご希望の方は、
各商品ページのSOLD OUT表示の下にあります
「再入荷通知を受け取る」ボタンからご登録いただけますと、
入荷次第、メールでお知らせが届くようになりますので、ぜひご活用いただければと思います。
*いずれのしめかざりも数量限定となり、完売した時点で販売終了いたします。
そして、こちらのコラム後半では、
長野のしめかざりを作られている皆さんのところを訪問したときの様子をご紹介します。
うかがったのは、今年の10月末。
しめかざりの製作が本格的に行われている作業場へおじゃましました。
弊店がお願いしているしめかざりを作ってくださっていました。
こちらは「寿酉(ことぶきどり)」の製作風景です。
寿酉や福縄(ふくなわ)など、縄の部分にボリュームのあるしめかざりは、綯った(なった)縄の内側に写真のような、わらの「あんこ」を入れて膨らみをもたせるようにします。
このあんこは手に握ったときの感覚で量を決めますが、その量によってもしめかざりの縄の形やバランスが変わってくるため、職人の勘や技がとても重要になってきます。
こちら(写真上)が「寿酉」。胴の部分(「波」ともいいます)にあんこが入っています。
綯うときの力の入れ加減、わらの量など微妙な調整を行いながら作っていきます。
こちらの寿酉に限りませんが、
作り手の皆さんのお話から、細部の作りにも手間を惜しまず、
しっかりと仕上げてくださっていることを改めて実感しました。
こちら(写真上)は巡り廻るの製作過程です。
毎年、8月頃に収穫した稲わらは、
刈られたあとすぐに専用の乾燥室で乾かして水分を抜き、出番まで保管します。
そして製作する際に、もう一度、稲わらを湿らせます。
これは、乾いたままの状態で作ると折れたり割れたりするためで、
水分を含んだ状態だと綯いやすくなるからです。
また作り終えたら、2,3日置いてよく乾燥させますが、
湿った状態で作ったしめかざりは形がしっかり整っていても、
乾いたしめかざりを見ると(おそらくわらが真っ直ぐの、本来の形に戻ろうとするのか)
形が崩れて変形してしまうこともあるそうで、
これが作る人にとっては難しいところ。
また、毎年育てている稲わら自体もその年によって出来が異なり、
前年にくらべてわらが短い、長いといった変化や柔らかさ、硬さにも違いがあるそうです。
今年の稲わらは質は良いものの、
どちらかといえば柔らかく、稲が短かい出来だったとのこと。
毎年作っているおかざりの形でも稲わらの性質が違えば、
作り方にも工夫が必要で、その年の稲わらの性質を掴み、
例年と同じような形に落とし込むまでには
ベテランの職人さんにおいても苦労するところなのです。
おなじ稲わらの品種でもやはり一本一本に個性があり、
おなじ農地でも東側、西側など育った位置によっても出来には違いが出てきます。
そうした一つ一つの個性のある「わら」たちを
手の感触で確かめながら、いつもと同じ形に落とし込むというのは
やはり技術や勘が大切で気を遣うところなのです。
職人さんのお一人とお話するなかで、こうおっしゃっていたのが印象的でした。
「ひとつ、きれいなもの(しめかざり)を作れても、数を作るとなるとけっこう大変です。」
試作なり自分の家用なり、そのために一つ丹念に作る。
それをきれいに、うまく作ることは簡単にできるかもしれませんが、
きれいな形のものを、安定した質で、数多く作る。それを毎年毎年、続けていく。
これは難しいことなのではないかと思います。
立場は違えど、私たち売り手の仕事にも通ずるところがあるように感じました。
たくさんの注文に応えてくださる作り手の皆さん。
プロの仕事について考えるヒントをいろいろといただきました。
また、しめかざりの製作についてもそうですが、
わらの質を向上させることについても常に研究されています。
「稲穂」には、虫が寄り付いてそこに卵を生みつけ、
のちに孵化することがありますが、その虫が付かないような工夫をされていたり
(殺虫剤は使用していません)、毎年稲わらの品種改良のために実験をしていたりと
つぎの年、さらにその先へと繋がるよう、さまざまな面で試行錯誤をされているのです。
「いいわらがないと、いいものが作れない」とおっしゃるのも印象的でした。
その稲わらで作られたしめかざりを、できるだけ多くの方にお届けし
良い年を迎えていただけるよう、今年も最後まで気を引き締めてまいります。
どうぞよろしくお願いいたします。
イチカワ アヤ