谷間のかごの村ダルハウゼン ダルハウゼンかご職人博物館② ― 2025年ドイツ出張記 Part 5

ダルハウゼンという町、そして、その町のかご歴史の一端に、大きな親近感を抱いた私は、
この博物館の中へと進んでいきます。

ダルハウゼンは、ドイツ・ノルトライン=ヴェストファーレン州に位置する
ベーヴァー川が流れる谷あいの村です。 このベーヴァー川があることで、柳の栽培や、舟運-しゅううん-による販売経路の拡大が発展しました。
ダルハウゼンでのかごづくりが産業として芽生え始めたのは、18世紀(1700年代)ごろと言われています。(日本でいえば、江戸時代中期から後期ごろ。) 元々は農業中心の村だったそうですが、食料流通が安定してきたり、医療と衛生が改良されていくと、人口が増えていきます。 
こちらが1800年のダルハウゼンの地図。この当時は数えられるほどの軒数です。人口は200人ほどだったそう。 
こちらが1855年のもの。55年で、土地が細分化され、軒数もずいぶん増えていることがわかります。人口は約900人にまで増えていきます。人口が増えても、農地は分割されていくため、農業だけでは、生計が成り立たなくなります。 
一部の人はアメリカへ移住し、多くは季節労働者として外へ出て行ったそう。 
そして、この地域での農家の副業としてのかご作りが本格的に始まったのもこの頃のようです。 
材料のやなぎは、ダルハウゼンの町を流れるベーヴァー川や、本流であるヴェーザー川の流域で採取されていました。当時、ダルハウゼンの人々はヴェーザー川流域における柳の採取権を持っていたと伝えられています。毎年、7月から9月にかけての6週間ほど、男性はヴェーザー川流域へやなぎの収穫にいき、束ねて持って帰ってきていたとのこと。 
柳は刈り取られた後、乾燥させるものもあれば、ベーヴァー川に浸され、皮を剥ぎやすくしてから加工されるものもありました。1954年のこの写真には、そのやなぎをベーヴァー川にひたしている様子が残されています。右手の建物は、いまのダルハウゼンかご職人博物館です。 
実際の皮付きのやなぎが浸されているイメージや、 
やなぎの束を裁断台も展示されています。 
もともとは、手で一本一本皮を剥いていたものも、1940年代になると、ローラー式の機械で剥けるようにもなっていきます。 
手前には、シンプルな皮剥き用金具、奥には機械の展示も。 
ここに川に浸しておいたやなぎをこすりつけることで、皮をむくという、実にシンプルな道具です。現在でもヨーロッパの作り手の方では、このような道具を使われている方もいらっしゃいます。 
こちらははさみのように指で挟んで、皮を剥く道具です。 
皮を剥いたものを天日干しすることで、やなぎの色が白くなります。これがダルハウゼンにおける基本の加工する前の、材料の下ごしらえです。そして、再度、水に浸して柔らかくしてから、かごが編まれます。 
ダルハウゼンの職人たちの作業台と椅子です。机の前方が下がる、傾斜がついているのがダルハウゼン式だそう。 
写真のようにダルハウゼンのかごは、底編みからはじまり、側面を立ち上げて、縁巻きへと仕上げていくスタイルです。 
作業台にある道具は、シンプルです。縁巻きをするときに編み目に差し込む道具や、編み目を詰めるためにたたくハンマーのようなもの、そして、ニッパー。 
また、かごだけではなく、太いやなぎを芯にした椅子などの家具も作られていました。 
竹を切るノコギリと同じような形のノコギリがありました!断面をきれいに切りたい時はこのノコギリがよかったそうです。 
作業台にあったノコギリと右は、太いやなぎの枝のまがりを矯正する道具です。家具などを作るときのやなぎはこの道具で矯正して、真っ直ぐにしていたそう。 
のちに、周辺でのやなぎでは、材料が追いつかなくなり、1800年代後半は、ポーランドやフランス、ベルギーからも、皮が剥かれたやなぎを輸入してました。こちらは、やなぎ計測用のはかりです。やなぎの売買には必要になりそうです。

こちらは当時のダルハウゼンの家の様子です。
人口200人規模からはじまった村、ダルハウゼン。
彼らは付近の河川流域の材料権、そして、やなぎの皮を剥いて白く製材する技術を持っていました。
家内制手工業で生計を立てていたダルハウゼンのかごづくりは、黄金期を迎えていきます。

続きは次のジャーナルで。
イチカワトモタケ
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“ひとつのテーブル”特集展
ドイツで出会った、ヨーロッパのかごたち
2026年
2月19日(木)・20日(金)・21日(土)・22日(日)・23日(月祝)
26日(木)・27日(金)・28日(土)
3月5日(木)・6日(金)・7日(土)
Open | 11:00ー16:00
実店舗 | 東京・南千住 「市川籠店」








