エスメ・ホフマンさんの展示と細編みの世界 ― ドイツ出張記 14

こんにちは。イチカワトモタケです。
2025年9月のドイツ出張では、もうお一人、
印象深い作り手の方にお会いすることができました。
今回のジャーナルでは、その方についてご紹介します。
*
リヒテンフェルスの町で開かれていた、かごフェスティバル。
その前夜祭では、メイン会場とはべつに設けられた特設会場で、
ある方の製作された作品が展示され、セレモニーも行われるとのこと。
それはぜひ見てみたいと思い、会場へと向かいました。

にぎやかなメイン会場を離れ、地図と案内板をたよりに会場へと向かいます。案内はドイツ語のみで、やや不安な気持ちを抱えながらの道のり。急な坂を登っていくと、ちょうど遠くの山の稜線に太陽が沈もうとしていて、思わず足を止め、しばしその景色に見惚れていました。 
途中、家の外壁にやなぎで編まれた少女のオブジェが飾られていました。こうして編み細工がそこかしこに見られるのも、かごの町ならではのたのしさです。 
夕日に照らされ、茜色に染まるこちらの建物が会場です。もともとは城があった場所を活用してつくられた建物とのことで、現在は町の展示やイベントの拠点としてつかわれているそうです。なるほど、坂が急だったのも納得です。 
はじめてこのお祭りを訪れた私にとって、メイン会場のにぎわいからはずいぶん離れた場所に感じられ、すこし不安な気持ちもありました。けれど、ありました。かご祭りの横断幕!

そして今回、この旧城で展示されているかごを作られたのが、
オランダのエスメ・ホフマンさんです。
展示のタイトルは
「Die feine Art des Flechtens(繊細な編みの芸術)」。
エスメさんは、やなぎを使った細編みのかごを得意とする作り手で、
これまでの作品を一堂に見ることができる貴重な機会ということもあり、私も楽しみにしていました。
また、すでに私たちがお取り扱いをしている
ベルギーのジェニーさん、ジェフカさんの師匠にあたる方でもあります。
この旧城での展示にあわせて、オープニングセレモニーも行われました。

旧城の大きな一室は、古い建築の面影をのこしながらも、
プロジェクターが設えられ、すこし高くなったステージには
ピアノが置かれていて、ホールのような空間でした。

こちらの、緑の服を着ていらっしゃるのが、エスメさんです。

かごクィーンの挨拶や、 
フェスティバル主催者のお一人である、マンフレッドさんのスピーチ。 
そして、主役であるエスメさんのスピーチがはじまりました。エスメさんはオランダの方ですが、かご作りを学ばれたのは、ここドイツ・リヒテンフェルスにあるかごの学校だったそうです。 
ドイツのかご学校は3年制で、年次ごとにカリキュラムが組まれており、3年間のあいだに「かご細工全般」「家具づくり」「細編み技術」を、それぞれ1年ずつ学ぶと聞いていました。ところがエスメさんは、ご自身の特性をよく理解されていたようで、学校に特別にお願いをし、「細編み技術」だけを3年間学びつづけたそうです。 
私もそれまで知らなかったのですが、このリヒテンフェルスは、かごの細編み文化が発達した地域で、細編みの技術をもつ多くの作り手が活躍してきた町なのだそうです。こちらの写真は、旧城のホールに併設されたギャラリーの一角。 
どれも細かな編みで、緻密に仕上げられた作品ばかりでした。 
そのリヒテンフェルスの細編み技術のコレクションを、しばしご覧ください。 
それぞれのキャプションには、製作年や作者名が記されていました。 
製作年は1925年から1930年ごろのものが多く、およそ100年前に作られたかごが並んでいました。 
緻密な模様のものや、 
蓋付きのかごなど、多様なかたちが見られました。 
日本の竹細工を思わせるような雰囲気のかごも。 
このように、昔のかご作りの場面を切り取ったような、かわいらしいミニチュア模型まで見られました。小さな、編みかけのかごも、しっかりと編まれていました。 
ミニチュア模型の世界も、やなぎの質感や細やかな編みの表情、壁に貼られた地図に至るまで、丁寧に作り込まれていました。こうした細やかな作り込みからも、細編みのかごが育まれてきた地域であることがうかがえます。 
エスメさんの話に戻ります。こうした細編みのかご細工が育まれてきたリヒテンフェルスの学校で、その技術を集中して学ばれたそうです。プロジェクターに映し出されているのは、エスメさんご自身の作品。繊細な編み模様の、蓋付きのかごです。 
こちらの写真のように、エスメさんは先ほどのミニチュア模型の作品も製作されたそうです。 
竹細工でもよく見られる六つ目編みを用いたかごもありました。 
スピーチの最後には、エスメさんに細編みの技術を指導した先生も登壇されました。その成長を前にして、先生が言葉に詰まるような場面も見られ、とても温かいセレモニーとなりました。

セレモニーが終わると、会場にいた参加者は展示室へと案内され、
それぞれがエスメさんの作品をじっくりと見て回っていました。
写真の左奥には、帽子をかぶったジェフカさんの姿も見えます。
師匠の作品を、あらためてたのしまれている様子でした。
この時間はたくさんの人でにぎわっていたため、
私は会期中に改めてゆっくりと拝見することにしました。

さて、それではあらためて、エスメさんの作品をご紹介してまいります。
すべてではありませんが、その一端をおたのしみいただけたらと思います。

細かな柵のような透かし編みの、蓋付きのかご。 
模様が浮かび上がる編みの、留め具付きの蓋付きかご。 
こちらもエスメさんの作品。私たちは、エスメさんの弟子であるジェフカさんにおなじかたちのものを作っていただきました。 
こちらも、エスメさんが作られたウォールバスケットです。私たちの店でも、おなじタイプのものをジェフカさんに作っていただいたことがあります。ほんとうに見事な作りです。 
こちらにも、以前ジェフカさんのお母さま、ジェニーさんに製作をお願いしたことのあるかたちがありました。ジェニーさんとジェフカさんは親子でエスメさんのもとで学ばれました。その師匠であるエスメさんご本人のかごを目にすることができ、とてもありがたい時間でした。 
端正な編みの四角いトレイや、 
透かし編みの軽やかなトレイなども。 
こちらは、日本の竹工芸にも近い印象を持つかご。 
こちらもそういう雰囲気があります。 
こちらは持ち手付きの、均整の取れたかたちのかご。 
かわいらしいミニチュアのかごも! 
どのかごも目を引くものばかりで、しばらく見入っていました。

こちらは、リヒテンフェルスで偶然お会いできたときの一枚です。
左からエスメさんの旦那さま、エスメさん、ジェフカさん、ジェニーさん。
私はエスメさんのお名前は以前から存じ上げており、
ジェニーさんとジェフカさんからも、
師匠でいらっしゃるとうかがっていました。
この皆さんがそろっていらっしゃる場に立ち会えたことがうれしく、
思わずお願いして、写真を撮らせていただきました。
今回のリヒテンフェルスでは、
エスメさんとゆっくりお話しする機会はありませんでしたが、
いつかあらためてお話をうかがい、
みなさまにそのかごをご紹介できたらと思っています。

今回、弊店で開催した
“ひとつのテーブル” 特集展
ドイツで出会った、ヨーロッパのかごたち
この特集展では、ベルギーの作り手、
ジェニーさんとジェフカさん親子のかごをご紹介しました。
お二人は、エスメ・ホフマンさんのもとで学ばれた作り手で、
確かな技術に支えられたかごを製作されています。
今回の特集展のために、お二人が届けてくださったかごをご紹介します。
リンクから、各商品ページをご覧いただけます。

ピンチバスケット S、M 
ミニマムな荷物でのお出かけにも。 
丸バスケット Natural・White 

やなぎ×オーク 丸バスケット Sphere 

やなぎ キャリーケースバスケット*SOLD OUT 

やなぎ 細編み 丸バスケット Spiral*SOLD OUT 

ジェニーさんとジェフカさん親子はユニットとして、
「デ・ラテラール(オランダ語で“音を鳴らすもの”の意)」
という屋号で活動されています。
ジェフカさんは、エスメさんの細編み技術を学び、
その技法を得意としながら、現在もさまざまな細編みのかごを製作されています。
一方、ユニットとして手がけられるものは、
ヨーロッパ各地に伝わるやなぎのかごのかたちから、
お客さまからのオーダーメイドまで、幅広いかごが見られます。
ジェニーさんがおっしゃっていた
「ゆりかごから棺桶まで」という言葉のとおり、
多様なリクエストに応じて、かごがつくられています。
店頭、そしてオンラインショップにて、
お二人のかごをどうぞご覧ください。

ドイツの出張記、いよいよつぎが最終回となります。
つづく

ベルギーのジェニーさん、ジェフカさんについて
こちらのジャーナルでもご紹介しています。ぜひご覧ください。
宝石のようなかご/ベルギーよりジェニー・ジェフカさん(後編)