スペインのパウさんとの出会い ―ドイツ出張記 11

こんにちは。イチカワトモタケです。

今回、弊店で開催している特集展では、
スペイン北東部、地中海に面したカタルーニャ地方でかごを編んでいる作り手、
パウさんが作られるかごも日本で初めてご紹介しています。

2025年のリヒテンフェルスのかご祭りで、はじめて出会った私たち。
私が南米パラグアイに2年ほどいたこともあり、片言のスペイン語で話しかけると、
パウさんも大変喜んでくれて、すぐに打ち解けることができました。

実際、お祭りが行われたのはドイツの小さな町ですから、
参加者も含めて、ほとんどスペイン語で話をする人はいなかったですし、
初対面の私のようなアジアの人がスペイン語を話したことは驚いたこととおもいます。
スペイン語を少し話すことができて、本当によかったとこの時に思いました。

私がパウさんに会いたいとおもったのは、
何年も前にどこかで見たカタルーニャ地方の伝統的なかごが描かれたイラストでした。

そこには、カタルーニャ地方の伝統的なかごのさまざまなかたちが描かれており、
イラストの雰囲気からすると、もうそこに描かれているのは遠い昔のもので、
現在では作られていないということを示しているように私には見えました。

伝統的なカタルーニャのかごは、やなぎとカーニャと呼ばれる竹のようなかたさのある「葦-あし-」をつかって編まれます。
その二つの素材をつかってつくられたかごには、ほかにはない色のコントラストが一度見たら忘れらないほど印象的です。

そのイラストに描かれたカタルーニャのかごの美しさがずっと忘れられず、
頭の片隅に置いたまま、10年ちかく過ごしていました。

そうしたら、ヨーロッパの作り手が投稿した写真に、パウさんのかごが写っているのが見えて、
「え!もしかして、今のはあのイラストのカタルーニャのかごでは?!」
と、何度も見直して、パウさんのことを紹介をしてもらい、直接連絡を取ることができたのです。

すぐにでもスペインに行きたい気持ちではありましたが、
ちょうどドイツのかご祭りへ行こうと決めてしていたため、少ない可能性にかけてパウさんにお聞きしてみると、
彼もドイツのかご祭りに参加されると聞いて、私は大喜びして、絶対にお会いしましょう!と、約束をしたのでした。

そして、実際にかご祭りの初日の一番初めに彼のブースを尋ねてみると、
なんとあの私がいつか見たイラストに描かれていたかごの実物がずらりと並んでいたのです!

もう、本当に感動しました。

カタルーニャの伝統的なかごを、現役でこんなにたくさんの数を作れる方にお会いできるなんて、
まるで夢のようでした。

そして、どのかごの仕上がりも質が高く、本当にかっこよくて、いつまでも見ていられる景色でした。

かご祭りの1日目の朝、お祭りが始まるまでに少し時間があり、まだ人が少ないころに、
コーヒーを飲みながら、ゆっくりとお話をすることができました。

お聞きしてみると、彼はカタルーニャ地方で代々かご屋を営む四代目とのこと。
それにも驚きました。お互いかごを生業として、場所は違っても長く営んでいることもなんだか親近感がわきました。

お祭りが始まり、お客様がいらっしゃるとお邪魔になると思い、
ブースを後にしましたが、お祭りの途中、私も会場をまわりながら、折々彼のブースには立ち寄って会話を交わしていました。

ゆっくりと後日、連絡を取り合い、いろいろな質問もしてみました。
彼は四代目であり、伝統的なかご作りをしていることは、自分自身の仕事にとって、
学びの面でも、日々作る作品の面でも、とても大きな影響をうけているとおっしゃいます。

「素材においても、伝統的な作品の再現においても、この仕事の純粋さをできる限り保とうとしています。
 伝統的なかご作りの中でこそ知識や技術は身につきますし、それがあるからこそ、
 革新やより現代的なかご作りが可能になるのだと思っています。」

しかし、パウさんは最初から、この家業を継ぐとは思っていなかったそうです。

「自分の意志に反した決断でした。
 私はとても勉強が苦手で、18歳のときに父が工房でこの仕事を学ぶように言いました。
 しかし時が経つにつれ、この仕事を愛するようになり、今では人生の中で欠かせない大切な一部となっています。」

パウさんは、私とドイツのかご祭りのブースで話をした時に、
「うちは父もかごを作るんだけど、木型をつかって編みつけるようにかごを作るのは、ズルだって言うんだ。
 だって、それなら誰だって完璧なかたちを作れるじゃないか、って。」

パウさんのかごは、本当に端正で凛としていて、力強く、かっこいいかごだと思います。
それを木型なしに、複数の数を同じように作り続けることはとても大変なことに違いありません。
それについて、パウさんに尋ねると、

「特別な秘訣があるわけではないですよ。
 大切なのは、とにかくたくさん仕事をして、素材を理解し、思い描いた形を与えられるようになることです。
 作り、そして間違えること。それが一番の学びです。次に作るときには、どこを直せばよいかが分かるのです。」

パウさんにかごを作る時に大切にされていることお聞きしてみると、

「すべてが重要です。まず、それぞれの作品に適した素材を選ぶこと。次にプロポーション。
 編み始めたら、できるだけ強い張りを保ち、正しい寸法になるように心がけます。
 そして最後に、仕上げをとても注意深く確認します。」

今のパウさんの仕事の喜びについてもお聞きしてみました。

「四代目であることは私に大きな誇りを与えてくれ、この家族の伝統を受け継いでいく励みになります。
 この仕事に携わることができること自体が喜びであり、私にとっては“薬”のような存在です。
 そして、この仕事が与えてくれる自由は、私にとってとても大切なものです。」

今回の特集展では、初めて日本にかごを送るというパウさんのかごも並んでいます。
伝統的なカタルーニャ地方のかごをどうぞお楽しみください。

どれも、スペイン・カタルーニャ地方の文化や暮らしをまとったかごです。

パウさんの手によって、かっちりと丁寧に作られたかごの数々、
どうぞお手に取って、ご覧ください。

ドイツの出張記はもう少しつづきます。

イチカワトモタケ

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“ひとつのテーブル”特集展

ドイツで出会った、ヨーロッパのかごたち

2026年

2月19日(木)・20日(金)・21日(土)・22日(日)・23日(月祝)
26日(木)・27日(金)・28日(土)
3月5日(木)・6日(金)・7日(土)

Open | 11:00ー16:00

実店舗 | 東京・南千住 「市川籠店」