日本とつながる、ダルハウゼン博物館 (1) ― ドイツ出張記 4

さて、たのしい宴から一夜が明けて…

ハンスゲルトさん宅の素敵なゲストルームに泊めていただき、
そのおかげでよく眠れ、すっきりとした朝を迎えました。

今回のジャーナルでは、
ダルハウゼンの「かご職人博物館」について、
そして、ダルハウゼンという町の歴史を少しご紹介します。

この日は特別にハンスゲルトさんから博物館を案内していただいたり
かごの道具について質問をしたりすることもできて、実りある時間となりました。

今のところ、こちらの博物館はワークショップ参加者のみ見学が可能です。
(2026年現在、ワークショップはお休みされています。)

さてそれでは、ダルハウゼンかご職人博物館ツアー、行ってみましょう!

さっそく博物館に入り、まず目に飛び込んできたのが、こちらのかごでした。

これは!
私にも見覚えのある、あのかごによく似ています。

日本のすず竹(スズ竹、みすず竹とも)でつくられたような、大きなトランク型のかご。
近づいてみると、ベルトなどの装飾こそ施されているものの、
素材の風合いや、かご細部のつくりは、やはりあのすず竹の「行李-こうり-」そのものです。

この博物館にはドイツ・ダルハウゼンで伝統的につくられてきたかごが
主に展示されていると思っていたので、そこに日本のすず竹細工が並んでいることは、
私にとっては予想外であり、そしてなんとも嬉しい発見でもありました。

そのとき、ひとつ思い出したことがありました。
知り合いの方から教えていただいた、日本のかご作りに関する*資料のことです。

かつて、大正時代に、静岡県御殿場市-ごてんばし-周辺の農家では、
副業として「竹行李」を数多く生産し、日本国内のみならず、海外へも盛んに輸出していたそうです。

さらにその以前、今の長野県松本市付近で行われていた「みすず細工」の技術をもつ人が
御殿場へ移り、おなじような性質をもつすず竹を用いて、行李を作りはじめたのがその始まりといいます。

ドイツから帰国後、あらためて資料を読み返してみると、
イギリス、オーストラリア、オランダ、そして「ドイツ」にも輸出していたという記録が確かに残っていました。

「四隅に革を付け、バンドも取り付けてトランク仕上げで輸出した。」

という一文もありました。

思わぬところで、
それまでのいろいろな点と点がここで結びつき、ひとつの流れが見えたような気がしました。

*引用、参考文献 : 御殿場市史編纂委員会編 『御殿場市史 別巻1 考古・民俗編』 御殿場市,1982年.

またダルハウゼン博物館の展示に戻ります。

こちらは、1930年頃のダルハウゼンで
かごや家具を製作していた人々の写真です。

中央に写る女性が、行李を作っていることがわかります。
展示によると、この行李作りの材料であるラタンは東南アジアから輸入していたそうで、
輸入先によってラタンを「マニラ(フィリピン)」や「マラッカ(インドネシア)」のように呼び分けていたとのこと。

なぜ呼び分けていたのか、気になります。
これはあくまで推測ですが、おなじ素材のラタンでも生育する地域によって強度、質感などがちがうために
たとえばマニラのものはかご作り用、マラッカは家具作り用、というように使い分けていたのでしょうか。

また、上の写真は1930年頃のものですが、日本でいうと昭和5年頃。
先ほどの御殿場で作られた行李の輸出が盛んだったのは大正時代ですので、
このときにはすでに日本製のものがこのダルハウゼンにも来ていたかもしれません。

東南アジアからラタンを取り寄せ、日本の行李のような仕様を再現しながら
ダルハウゼンでも生産を行っていたのでしょう。

こちらの写真は、1925年頃、数名の女性かご職人が「日本バッグ」を製作しているところだそうです。

すず竹行李のような細やかな編み目は、日本では女性の手仕事であることが多いという印象ですが、
もしかするとドイツでも、おなじような役割分担があったのかもしれません。

また、ドイツ語の“Japantaschen”は、直訳では「日本バッグ」。
当時は行李のかたちが、特定の型としてそのような名称で呼ばれていたようです。

まさか、初めて訪れたドイツの町のかご博物館で、日本の竹行李と
それをもとにラタンで生産されたかごを見ることになるとは、思ってもみませんでした。本当に驚きました。

そして、それがこの博物館のメインスペースともいえる場所に、
ダルハウゼンの伝統的なやなぎのかごと並んで展示されていることを誇らしく感じました。

博物館の最初の一室で、自国とのつながりを知り、実物を目にして、
かつてのかごの作り手やかご商人たちに思いを馳せる。

ドイツと日本のかごにまつわる物語の一端に触れられたような気がして、
その歴史の重なりにしばし浸りながら、私はダルハウゼンという町、
そして「かごの村」としての歩みに心を引かれていきました。

そして、ここに展示されている、見るからに力強く、
きっと働き者であっただろうダルハウゼンのかごたちを眺めながら
この村のたどってきた道のりを、もっと深く知りたいと思うようになりました。

ダルハウゼンに滞在していたのは、実質一日半ほどでしたが、
その間、特別に許可をいただいて、なんども博物館に足を運んで
じっくりと時間をかけて見学させていただきました。

この続きは、また次のジャーナルにて。

イチカワトモタケ

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“ひとつのテーブル”特集展

ドイツで出会った、ヨーロッパのかごたち

2026年

2月19日(木)・20日(金)・21日(土)・22日(日)・23日(月祝)
26日(木)・27日(金)・28日(土)
3月5日(木)・6日(金)・7日(土)

Open | 11:00ー16:00

実店舗 | 東京・南千住 「市川籠店」